あれは8月に入ってすぐのこと、近所にお住まいの筋金入りエンスーにして私の同級生のお父さん、A氏が私を訪ねて来ました。「どうしました?」「いや、クルマが1台仕上がったから見せにきたんだよ」。マニア垂涎のクルマ遍歴を誇るA氏なのでウキウキと店の扉を開けて、腰が抜けるかと思いました…。

え、エスハチ…
クルマ趣味をはじめて20余年の私も、道端に停まっているのを1回、あとはミュージアムでしか見たことのない屈指の名車Honda S800が、なんでオイラを訪ねてくんの?しばらく現実を受けとめることができませんでした。ベース車輛を手に入れて約2年じっくりレストアされたそうで、入手時の県外ナンバーを交換するため陸運へ向かう途中に「イセッタ君ならば好きだろう」と立ち寄ってくれたのでした。ハイ、大好物でございますぅぅぅぅ(泣。

うしろから。ランプもメッキもピカピカだあ。
お世辞抜きで新車と見紛うばかりのコンクール・コンディション、しかも貴重な初期型チェーンドライブ!吉田匠氏がカーグラフィックでレポートした記事も読んだし、GTロマンも何回読み返したか知れません。免許を取る前からいつかは欲しいと夢想するうちに世はバブル全盛期、相場はバンバン跳ね上がり、いつしか手の届かない存在に。色んなものがスキだとここに書いているので俄に信じては頂けないと思いますが、エスハチはボディサイズ・内外装デザイン・排気量・駆動方式&エンジン形式・その他メカニズムと、ほぼ全てにおいて私の理想なのです。

コクピット。ため息…。
運転してイイですか?とは恐れ多くて言えませんでしたが、運転席には座らせてもらいました。感動。ハンドルを10時10分で握った時に右手の指が届くよう位置決めされた、ダッシュボードから生えるホーンレバー、その斜め上にはイグニッションスイッチ、センターコンソールにはライトのon/offとhigh/lowのスイッチ、かつて記事で読んだとおりだ…。昔乗ってたビートも、こうだったら手放さなかったかも(笑。

時計のように精密と言われたエンジン。
帰り際にエンジンがかかるさまを見ていると、「キュキキキキキキキキ」という元気なスターターの音に続いて一瞬の静寂。あれ、かかってない?と思いきや「シュウーン」というキレイなエンジン音。乾いた排気音とミックスされて見た目よりグッと大人のサウンドでした。

これまたピカピカのエンブレム。
この字体が、この大きさがいいのだ!筆記体のエンブレムはクルマを選びますからなあ。それにしても近ごろのクルマのエンブレムって、年々肥大化してると思いませんか?プジョーのライオンもニューモデルが出るたびに一回りずつ大きくなってるような気がするんですが(笑。

真っ白なボンネットに葉の陰が。
コーヒーを飲みながらA氏とクルマ談義しているうちに日射しが強くなってきたので、また外に出て輝くボディを撮影。まだまだオイラの稼ぎではウチにやってくることはないクルマですが、ご近所にいるだけでも幸せです。もしも運転させてくれるなら、何日か断食して精進潔斎してからハンドルを握りたいものです(笑。いやあ、クルマ好きで良かった、クルマ好きだと人に思われてて良かった!

オマケ。ランチア・ベータ・モンテカルロ シリーズI
撮影は2004年の初冬。これまたレストア直後に見せてもらった時のもの。A氏はランチアのオーナーとして有名な方なのです。もう1台すごいのをお持ちで、ネコ・パブリッシングの雑誌にはこのベータも含めて結構登場してたりします。そのうち写真撮らせてもらったらまたご紹介しましょうぞ。